2013年12月31日火曜日

2013年に出会って面白かった本

気が付けば2013年も残り数時間となってしまいました。
あんまり年の瀬という感覚がないので、我が身を振り返る意味も含めて、今年読んで特に面白かった本をフィクションとノンフィクションに分けて五つ選んでみます。今年はどうやら今の時点で118冊読んだようです。漫画はそのうち30冊くらい。(これから寝る前に一・二冊読むから総数としては120冊くらいになりそう)

あくまで今年「読んで」「面白かった」本で、古い本、もはや定番でしょ、ってものも多いし、あと、面白かった、のであって、役に立ったとか、そういう基準では選んでいません。

【今年出会って面白かった本・フィクション編】

◆『「少女神」第9号』 フランチェスカ・リアブロック


アメリカのYA短編集。セックス、ドラッグ、両性愛、トランスジェンダー、ちらりと匂わされるスクールカースト、音楽、スター、こういったものがちりばめられている、本当にまっすぐでキラキラした、正当な、少女たちの(ための)物語たち。お気に入りは「レイヴ」と「キャニオン」、「ピクシーとポニー」。10代の頃に読んでいたらバイブルになっていただろう。しかし今の私にも宝物になった。

◆『最後のユニコーン』 ピーター・S・ビーグル


ファンタジー小説、というかメタファンタジー。自分の状態や近しい人々のことを思い浮かべながら読み、色々な示唆を貰った。ファンタジーという物は日常のノイズの中に埋もれてしまっている、この世界にある美しいものを抽出する機能を持っているのだろう、とこの作品を読みながら思った。これは不条理な世界で生きて傷つき、戦っている人間のために紡がれた物語だ。おそらく、読者の経験が深ければ深いほどこの小説の面白さや美しさは増すのだろう。大魔法使いニコスが弟子のシュメンドリックに言った言葉が胸を深く突く。

◆『ファンタジウム』(1)~(7) 杉本亜未


漫画。 マジシャンとしての稀有な才能と、LD(学習障害、この作品だとディスレクシアが顕著)という現代社会では生きづらい特性を持つ少年と、彼を見守る大人の二人が主人公。単に手品を描いた作品でも、障害を描いた作品でもない、不思議な作品。抱えるものが大きい人も、そうでない人も、それぞれに苦しみ、喜び、幸せを希う様子が丁寧に描かれていて、作者の人間に対する温かいまなざしが感じられる。ここで描かれるマジックというのは、人間が生きる上でいつも行っているあらゆる「表現」の極まったものなのだろうと思う。表現すること・伝えることへの真摯な思いや愛が伝わってきて胸を打たれる。世界の不条理と戦う魔法はなにかを愛することなのだろう。物語の大きな枠組みや見せ方も上手いし、見落としがちな小さなエピソードに至るまで良く出来ていて本当に面白い。(4巻の、コンプレックスにとらわれていた成田課長が仕事にかつてないやりがいを見出すエピソードとか、好き)

◆『夢のなかの夢』 アントニオ・タブッキ


短編集。イタリアを代表する作家のひとりであるタブッキが、芸術家たちが見たかもしれない夢を織り上げる。ダイダロスの夢で始まってフロイトの夢で終わるなんて、上手すぎる。境界線が無くなっていってぐずぐずにエロスの世界に溶け込んでいくような最後の夢がぱっとさめた後、愛と洞察に満ちたそれぞれの人物の簡潔な紹介が続くのも良くて、とても幸せな気分になる。ダイダロス、ラブレー、カラヴァッジョ、スティーヴンソン、ランボー、ドビュッシーの夢がお気に入り。ダイダロスの夢は何千年も前の夢が虹を結ぶように美しい。ドビュッシーの夢の官能もたゆたうようになめらかで心地よい。

◆『この世界の片隅に』 こうの史代



漫画。読み終わった後、言葉に出来ない感情やまとまらない考えが体の中に溢れて苦しくなった。主人公すずとその周辺の人々が失うもの、後に残していくもの、先に待っているもの、どれもとても重い題材なのに、それをいやらしく重々しく描かず、また軽妙にもせず、淡々と、「普通のこと」というのか、そうしたものが存在するのだ、というすがすがしい筆致で描き出しているのが本当にすごい。すずは、この世界の不条理、自分では背負いきれないものを、(生きるために)処理しようとして、物語る。自分では知りようもないことを物語化し、神話化し、そして生きていく。物語は弱者のものだという言説を近頃色々な所で見かけるけれど、確かに物語は弱い人々を救う。生きるための物語の力を笑いたければ笑えばいい、と私はこの作品を読み終えた時に思った。描写されるものと、描写の仕方のたぐいまれな調和が、漫画というメディアの表現の可能性を教えてくれた。すごいものを読んでしまった。出会えて幸せ。



では次に物語以外の読物。こっちは感想なしでぱぱっと名前だけ。

【今年出会って面白かった本・ノンフィクション編】

◆『世界の調律』 R・マリー・シェーファー


◆『子供の宇宙』 河合隼雄


◆『中世の旅芸人』 ヴォルフガング・ハルトゥング


◆『いまファンタジーにできること』 アーシュラ・K・ル=グウィン


◆『インプロ―自由な行動表現』 キース・ジョンストン




今年は良いフィクションにたくさん出会えたように思う。宝物が増えて嬉しい。来年もたくさん面白いものに出会えますように。

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