ラテン語を何とかしようと思って、
ここずーっと、毎日ちょっとずつ、
オウィディウス『変身物語』を読んでいたのですが
難しいし時間かかるしで飽きてきて(最低)
一昨日からはオウィディウスを一時中断して、
カトゥッルスの『詩集』第64歌、
「ペレウスとテティスの結婚」に取り掛かっています。
超面白いんですけど…!!!!
えーと、ご存知の方もいらっしゃるでしょうが、
この作品は牧歌というジャンルから派生した(と思われる)
「小叙事詩」という詩のジャンルの代表的なものです。
ペレウスとテティスの祝婚歌のモティーフをとった長編詩なのですが、
このなかになっがい「脱線」があります。
この部分ゆえに「小叙事詩」と呼ばれるのですが、
なななななーんと、テセウスとアリアドネの物語がここで歌われています。
しかも、ホメロス以来の叙事詩の伝統に基づいてヘクサメトロス…。
(めっちゃくちゃかっこいいです!!!)
捨てられたアリアドネーの嘆きがメインなんですが、
これがもう、表現が美しいのはもちろんのこと、
体の心から湧き上がってくるような嵐のような感情が
ビビッドに伝わってくる、そういう素晴らしい筆致で描かれていて、
訳しながら惚れ惚れしてしまいました。
というわけで、私のつたない訳でちょっとご紹介!
ガーイウス・ウァレリウス・カトゥッルス、第64歌、47ー93行
女神(テティス)の聖なる臥所がしつらえてあるは
宮殿の中央。インドの象牙によって飾り立てられ
貝の薔薇色の染料で彩られた紫の掛け布が、これを覆っている。
いにしえの人々で色とりどりのこの掛け布は、
英雄達の偉業を素晴らしい腕前で伝えている。
《以下、掛け布の絵柄についての描写。「小叙事詩」のメイン。》
波音とどろくディーア(ナクソス島)の岸に向かいながら
テセウスが遠い艦隊と共に去っていくのを
抑えきれない怒りを胸に抱いて、アリアドネはじっと見つめている。
彼女はまだ、目の当たりにしているのものを、本当に自分が見ているのだということさえ信じられないでいた。
それもそのはず、彼女はまやかしの夢から覚めたばかりで
孤独な砂浜にみじめにも置き去りにされたわが身に気付いたのだから。
しかし、無情な若者は、オールで海を叩いて逃げて行き、
守らなかった約束を荒れ狂う風に捨てていってしまった。
テセウスをはるかに、海藻からむ海岸からミノスの娘は嘆きのまなざしで
あたかもバッコスの信女の石像のように、見つめている…ああ!
見つめながら、心痛の大波にゆられている。
金髪渦巻く頭から飾り布が落ちるのを押さえもせず、
ヴェールで覆われていた胸はもはや薄い衣で隠されておらず、
豊かな白い乳房を胸紐で縛りもせず、
これらすべては、彼女の体から足元そこかしこに
ずり落ちて、うねる波にもてあそばれていた。
しかし、髪飾りをも、波に揺れる衣をも気にかけず
テセウスよ、打ちひしがれたアリアドネは心のありったけを、
魂のありったけを、精神のありったけをかけて、おまえにすがっていたのだ。
ああ、哀れな娘よ!絶え間ない悲痛で彼女を狂わせたのは
エリュキーナ(ウェヌス)…棘だらけの愛を胸の中に植えつけたのだ。
それはあの時から――残忍なテセウスが
ペイライエウスの囲まれた港から出航し、
不正の王のゴルテュン(クレタ島の地名)の宮殿に到着した時からずっと。
噂では、むごい疫病の中にありながら
ケクロピア(アテナイ)はアンドロゲオスを殺した罪の償いを強いられて
選ばれた若者と、未婚の乙女の中でもひときわ美しいものを
ミノタウロスに御馳走として与えることを習慣としていたという。
この災いによって町が苦しんでいた時、
テセウス自身が愛するアテナイのために自らの体を
投げ出すことを望んだのだ――このような、
ケクロピアの生ける屍たちをクレタに運ぶくらいならば、と。
それゆえに、軽やかな船と柔らかなそよ風によって彼は
気高きミノスのもと、荘厳な宮殿へと現れる。
この青年を熱望のまなざしで見つめてしまうや否や、乙女の身の姫君は
これまで、まるでエウロータースの川の流れに抱かれるミュルテのように、
あるいは、春の息吹がさまざまな色合いを引き出すかのように、
清らかでかぐわしい寝台によって
母の優しい抱擁ではぐくまれていたのに、
思慕に燃えるまなざしを逸らしたとたん、
彼女の体の底から、全身に火がついて
骨の髄から急に炎が燃え上がってしまったのだ。
ああー!訳がお粗末で原文のよさが伝わらない!もどかしい!
このあと、アリアドネちゃんによる、
涙にぬれた凍える言葉による盛大な恨み節がやってくるのですが、
そこはまだちゃんと訳してないのでまたいつか…。
体の芯に急に炎がともるという表現の生々しい美しさもさることながら、
ウェヌスが「棘だらけの愛を胸の中に植えつけた」っていう箇所に
私は完全にやられました。なんっって美しいイマージュなんだー!!!
炎のように真っ赤な、いばら渦巻くバラの花が思い浮かびました。
その赤は、棘によって傷つけられたアリアドネ自身の血の赤でもあるのでしょう…。
うっとり…。
ラテン語嫌いになりかけてたんですが、
またちょっと好きになりました。
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